原題の押絵羽子板の基礎を作ったと言われる永井周山。その秀作は吉徳これくしょん（吉徳人形美術館）にも収められています。 こちらは商品として多数作られた数物ではなく、美術品として限定制作された逸品で、右上に「周山作」と銘も入っています。 この様なお品が残っていることは稀だと聞きました。 吉徳これくしょんの説明を読みますと、周山は研究熱心で、かの鏑木清方が愛し、後に清方の絵を元に作品を生み出しているそうです。 モチーフは歌舞伎の大看板、市川団十郎さんが演じる曽我五郎。 また、演者が団十郎だと言うことは、裏側の三枡から明らかです。 　 この演目は、富士山の麓で見事本懐を遂げるという吉事が、その舞台見取りの美しさと共に江戸の人々に好まれて、今でもお正月によく取り上げられています。 曽我五郎十郎はそれぞれ衣装の絵柄が決まっていて、蝶々は五郎を表します。 繊細な甲冑も作りも見どころの一つですね。 裏側は、冒頭で説明しました市川家の紋となる三桝、そして牡丹です。手描き。 全体的にとてもきれいな状態で保存されていますが、矢の根元が折れているように見えます。なお、矢は板に接着されており、外れたりはしません。 高さ約20cm弱、矢の先まで含めると　およそ23cmです。 木製金箔ちらしの台付。